Nobel







第二章―片目の無い魔法使い―
「うわぁ・・・なんかすごい奥まで来ちゃったなぁ・・・ほんとにこの奥に家なんかあるのか?」
草を渡された短剣で切りながら、迷人は前へ進んでいく。
「あの・・・あなた、迷人さんですか?」
少女の声がした。
迷人はそちらに耳を傾け、返答をした。
「そう・・・ですけど、アンタ誰?」
少女は右目を髪で隠し、小さな声で答えた。
「ぁ・・・本当だ・・・私、魔法使いの麻斧です。フレイヤ様から聞いてます。」
よく見ると、黒いローブからちらつかせて見える物は薬草のような物で、手には先がぐるぐると渦を巻いた杖だった。
「麻斧・・・、ふーん。じゃあ、よろしくぅ。」
そう言うと、迷人は麻斧に手を差し出した。
麻斧もまた、手を差し出して、握手を軽くした。
「あの、なんて呼べばいいですか?迷人さんって呼ぶのは、ちょっと・・・」
手を口に持っていき、いかにも恥ずかしそうに話し出した。
「ああ、迷人でいいよ?俺も麻斧って呼べばいいよね?」
そうすると麻斧は困ったように、首を横にふった。
迷人は、え、と困ったような声をこぼした。
「ここの世界では、あぁ敬語も止めますね?ここの世界では、本名で呼ぶと巨人の王様が来て私達食べられちゃうの。
だからあんまり良い事じゃないの、本名・・・
もっとこう、私は生まれた時から友達なんていなかったんだけど、おばば様には【マオ】って呼ばれての。」
「じゃあ、よろしくマオ!じゃあ俺は、【メイ】とか?かな・・・?」
麻斧は顔をパッと明るくし、目を輝かせた。
「メイ!そうだね、よろしくっ、メイ☆」
にっこり微笑んだ麻斧の顔を迷人は直視できなかった。
それから麻斧の家に行くまでに胸の高鳴りが収まらなかったのは言うまでもないだろう。